みなさんこんにちは、田舎の精肉店肉処とよた略して『肉とよ』です🍖
↑以前、『BSEについて』を肉とよ的に解説しました。
この病気はヒトにも感染するかもしれないとして、政府が牛の検査・買い取りなどの対策を講じましたが、これを悪用した食肉関連企業による牛肉産地偽装事件が相次いで発覚し大きな社会問題となりました。
BSE発症→政府の対策→牛肉偽装事件
これら一連の流れをまとめて世間一般に『BSE問題』と表記されます。
今回はこの『BSE問題』について肉とよ的に解説していこうと思います。
”BSE問題”とは
まずは簡単にBSEのおさらいから。
BSEは牛海綿状脳症(うし(ぎゅう)かいめんじょうのうしょう)の略で、牛の脳の中に空洞ができ、スポンジ(海綿)状になる感染症(プリオン病)を指します。
ヒトの病気でもあるクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD,一般的に初老期に発病、発病初期から歩行障害や軽い認知症、視力障害などが現れる)と非常によく似ていることから、同一病原体によるものと現在のところ結論されています。
日本においては特定危険部位として
- 脊髄
- 背根神経節を含む脊柱
- 舌と頬肉を除く頭部(具体的には眼・脳・扁桃など)
- 回腸遠位部(小腸のうち盲腸との接続部から2メートルの所まで)
以上のものが指定されており、これらの部位を摂取するとCJDを発症する危険が高くなる、といわれています。
2001年 | 千葉県(9月)・北海道(11月) |
2004年 | 神奈川県(2月)・熊本県(9月) |
国内でもBSEの発症(合計で36頭)が見られたため、対策事業の一環として全頭検査前の国産牛肉買い取り事業を農林水産省が実施しましたが、これを悪用した食肉関連企業による牛肉産地偽装事件が相次いで発覚し、大きな社会問題となりました。
相次ぐ偽装・詐欺事件
2001年、全頭検査前の国産牛肉買い取り事業を農林水産省がBSE対策として実施。
この救済策を悪用した牛肉偽装事件が、2002年以降相次いで発覚しています。
日本で起きた最初に発覚したBSE関連の牛肉偽装事件は、「雪印食品株式会社」による補助金詐取事件です。
同年10月、雪印食品関西ミートセンターのスタッフが外国産の安価な牛肉を国内産牛肉としてパッケージに詰め替え、農林水産省に買い取り費用を不正に請求、2億円の補助金を騙し取りました。
雪印食品会社と取引きのあった冷蔵会社からの内部告発によって発覚しました。
これにより、2002年4月に雪印食品廃業・解散(精算は2005年8月)。
同年5月に同社関西ミートセンター元本部長ら5人が逮捕(のち3人が有罪判決)されています。
また、2000年に雪印集団食中毒事件を起こしていた親会社の雪印乳業は、この事件がとどめとなり、全農など農協系の支援を受けて日本ミルクコミュニティに統合されました。(のちに雪印メグミルクに吸収合併)
集団食中毒事件の影響で雪印食品から分社化していたアクリフーズも、2003年ニチロ(現:マルハニチロ)に売却されています。
雪印グループの一連の事件は、企業の不祥事にとどまらず、創業の地である北海道内のBSEで、打撃を受けた畜産農業に追い打ちをかけました。
大阪市の食肉卸売業「ハンナン株式会社」元会長の浅田満らが起こした補助金詐欺事件では、計約50億3000万円の詐欺や補助金適正化法違反(不正受給)などの罪に問われています。
ほかにも、2002年6月に福岡県古賀市のハム・ソーセージ製造企業の「日本食品」の牛肉偽装や、同年7月には「日本ハム」による買い取り事業申請を取り下げた牛肉の無断焼却発覚や牛肉偽装・隠蔽発覚などなど。
大手食品メーカーを含む食品偽装と補助金の詐欺事件の続発は、社会に衝撃を与えました。
BSE関連の牛肉偽装事件で相次いだ企業犯罪により、食の安全に対する国民の信頼が大きく揺らいだのです。
社会的影響も
1991年牛肉の輸入自由化により、日本の牛肉需要を支えてきたのは主にアメリカ・オーストラリア。
当初の輸入量は半々でしたが、2003年、アメリカ産牛肉にBSE問題が発生し全面差し止めとなりました。
※ちなみに。
2005年に牛肉輸入再開にいたりましたが、全頭検査が拒絶されたり、抜き打ち検査にて輸入禁止の脊椎部が混入していたりと、アメリカ産牛肉の信頼回復は遅れています。
現在の牛肉の原産国別の仕入れ比率をみると、原産国別では「オーストラリア産」が45.2%と最も高く仕入れの半数近くを占めており、ファストフードや牛肉チェーン店を中心に安定量が輸入されています。
この米国産牛肉の輸入禁止は、外食産業の経営にも大きな影響を及ぼしました。
大手牛丼チェーン店である吉野家では、牛丼を2004年から2008年まで長期間に渡り販売を中止しています。
全日空・日本航空など航空会社の機内サービスでも、ビーフコンソメスープの提供が一時中止されました。
牛肉を大量に使用している焼肉店や、焼肉文化に支えられている焼肉のたれといった焼肉関連産業も、大きなダメージを被っています。
さらにはBSE関連の報道過熱により、BSEが発生したと報道された畜産農家や、後にBSEだと判定された牛の目視検査をした獣医師が相次いで自殺し波紋を呼びました。
2013年現在、BSE検査を実施している国はEUと日本のみです。
まとめ
BSEからはじまる一連の事件について肉とよ的にまてめてみました。
BSEそのものに加え、相次ぐ企業による牛肉偽装事件の発生。
畜産業や精肉店などの食肉関連産業、食品加工業や外食産業、スーパーマーケットなどの流通業、そして一般消費者を巻き込んで、食の安全が問われた一大問題となりました。
BSE問題は、牛肉だけでなく”食品”への感心が高まった良い機会でもあるように思います。
今一度、私たちが口にするものの安全・安心さを大事にしたいですね。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。