みなさんこんにちは、田舎の精肉店肉処とよた略して『肉とよ』です🍖
世界的に見ても、日本の銘柄牛はその品質の良さから高級とされています。
和牛の場合には、とくに「銘柄和牛」とも呼ばれており、
- 松阪牛(三重県松阪市周辺)
- 神戸牛(兵庫県)
- 近江牛(滋賀県)
これらの種類は、銘柄和牛のなかでもとりわけ知名度の高い”老舗銘柄”です。
もとは役牛(えきぎゅう、農耕・運搬用の牛)で、さまざまな品種改良を重ね、昨今の「銘柄和牛」となりました。
同じく役牛を出荷したものをはじまりとする米沢牛や前沢牛も有名ですね。
どれも日本人の飽くなき食への探究心の末にうまれた、世界に誇る”和牛”です。
一方で。
歴史は浅くとも有名な銘柄として、日本で生産されている”ブランド牛”が500種以上あることをご存じでしょうか?
例えば岐阜県の飛騨牛であったり、県名を冠とした佐賀県の佐賀牛・宮崎県の宮崎牛であったり。
これらの銘柄は”日本三大”とはいわれなくても、高級な牛肉としてみなさんも知るところでしょう。
では、なぜこれらの銘柄が全国的に知られているのか。
有名なブランドたりえる、ひとえに「何かしらの賞を受賞したから」といえます。
こと牛肉に関しては、”内閣総理大臣賞”を受賞した牛肉が国賓に振る舞われた‥といったニュースを聞いたことはありませんか?
この内閣総理大臣賞という大層な名前の賞は『全国和牛能力共進会』で認められた牛にのみ輝く、いわば「食用牛肉界最高」の証。
一般消費者には何のこっちゃ???というこの『全国和牛能力共進会』について、今回は解説していこうと思います。
全国和牛能力共進会とは
世の中にはオリンピックやサッカーワールドカップといった誰しもを熱狂させるような祭典がありますよね。
実は和牛界にも似たような祭典があり、それが全国和牛能力共進会(以下全共)なのです。
スポーツ関係の祭典は4年に1度であることに対し、全共は5年に1度の開催。
そのため、全共はまたの名を「和牛のオリンピック」とも呼ばれています。
そもそも共進会とは?なんのために開催されるの??
牛肉市場における取引の活性化、生産者の生産意欲などの高揚を目指した品評会として、共進会や共励会といったものが全国で定期的に開催されています。
その中でも全国和牛能力共進会は、その時代時代における和牛生産や改良を目標として掲げています。
主催は全国和牛登録協会。
5年に1度の”和牛のオリンピック”は、全国の都道府県から選抜された優秀な和牛が約500頭集結します。
改良の成果を競う「種牛の部」と肉質を競う「肉牛の部」とに分かれており、それぞれの部門で名誉賞(内閣総理大臣賞)と最優秀枝肉賞という最高位があります。
※2017年の前回大会では開催地が宮城ということもあり”復興特別出品区”として「高校の部」が設けられましたが、第12回鹿児島大会からは「高校及び農業大学校」の部として新設されます。
また、時代の流れに即応した【テーマ】が開催ごとに設けられています。
大会 | 開催県 | 開催年 | 参加道府県出品頭数 | 開催テーマ |
第1回 | 岡山県 | 1967年 | 6県 99頭 |
和牛は 肉用種たりうるか |
第2回 | 鹿児島県 | 1972年 | 24府県 211頭 |
日本独特の肉用種を 完成させよう |
第3回 | 宮崎県 | 1977年 | 33道府県 279頭 |
和牛を農家経営に 定着させよう |
第4回 | 福島県 | 1982年 | 33道府県 314頭 |
和牛改良組合を 発展させよう |
第5回 | 島根県 | 1987年 | 35道府県 324頭 |
着実に伸ばそう 和牛の子取り規模 |
第6回 | 大分県 | 1992年 | 35道府県 391頭 |
めざそう国際競争に 打ち勝つ和牛生産 |
第7回 | 岩手県 | 1997年 | 37道府県 432頭 |
育種価とファイトで 伸ばす和牛生産 |
第8回 | 岐阜県 | 2002年 | 38道府県 469頭 |
若い力と育種価で早めよう和牛改良、 伸ばそう生産 |
第9回 | 鳥取県 | 2007年 | 38道府県 492頭 |
和牛再発見! 地域で築こう和牛の未来 |
第10回 | 長崎県 | 2012年 | 38道府県 480頭 |
和牛維新!地域で伸ばそう生産力 築こう豊かな食文化 |
第11回 | 宮城県 | 2017年 | 39道府県 513頭 |
高めよう生産 伝えよう和牛力 明日へつなぐ和牛生産 |
和牛が持つその能力にさらに磨きをかけて、世の中に和牛文化をバンバン発信していくぞ!!という気概が感じられますね。
経済効果は未知数!
他の共進会や共励会が品評会で終わる業界内のイベントであることが多いのに対して、全国和牛能力共進会では一般来場者も集まり、食をはじめ観光・物産・歴史文化など幅広くPRする場となっています。
そのため、開催地ではかなりの経済効果があり、本当にお祭りのような盛り上がりになるようです。
2017年宮城で開催された第11回大会では、会場内外で農業や観光・文化などをアピールするイベントとなり、一般消費者もごそっとやってくるので経済効果がそれはもうすごかったんだとか。
来場者は42万人、経済波及効果が試算によると101億1700万円にもなったとのことです。
それもそのはず。
宿泊だけで考えても大人数の大会関係者が何泊もしてくれるわけですから、観光地のホテルなどはこれほどありがたいことはないですよね。
ちなみにこの大会における総合順位はこちら↓
1位 鹿児島県
2位 宮崎県
3位 大分県
4位 宮城県
第12回目鹿児島大会の結果やいかに!
そんな”和牛のオリンピック”ですが、今年2022年の10月6日(木)から10日(月)にかけて鹿児島県にて第12回目が開催されました。
【開催テーマ】”和牛新時代 地域かがやく和牛力”
鹿児島県での畜産は県農業産出額の約6割(そのうち肉用牛生産は畜産分野の約4割)を占めているなど、重要な基幹作目となっています。
一方で、担い手の高齢化等により肉用牛飼養戸数は年々減少していることから、この大会を契機に新たな担い手の確保に努め一層の生産基盤の拡大を図ります。
【イベントテーマ】”和っ!と驚く美味さが,牛っ!と詰まった和牛の魅力を鹿児島から”
全国から多くの来場者が予想されることから「鹿児島黒牛」をはじめとする鹿児島の「食」や「観光」などを幅広くPRし、県の魅力を最大限に発揮する大会を目指しています。
※和牛フェスinかごしま2022 HPより引用
前回総合順位1位を獲得した鹿児島。
さてさて‥気になる結果は‥。
最終日の10日、鹿児島県霧島市の会場にて最も優れた牛に贈られる「内閣総理大臣賞」の審査が行われました。
その結果、牛の体格のよさなどを評価する「種牛の部」では主催地鹿児島県の3頭が受賞!
また、実際に肉にして肉の質や量などを評価する「肉牛の部」では宮崎県の3頭が選ばれました。
今大会で、鹿児島県は2つの部門で合わせて8つある区分のうち5つで第1位の首席を獲得したほか「内閣総理大臣賞」も獲得!
全国肉用牛枝肉共励会とは違う??
和牛のオリンピックである全国和牛能力共進会とは違って、全国肉用牛枝肉共励会というものもあります。
毎年10月ごろに東京食肉市場で行われる全国大会のことをいい、畜産業界内の純粋な品評会なのでお祭り的要素はありません。
「枝肉状態」になった和牛牡牛、去勢された和牛・交雑牛に、それぞれ最優秀賞(和牛去勢牛には名誉賞も)が与えられます。
どちらも日本一という称号には変わりはありませんが、生きている牛か屠殺後の枝肉状態なのか‥その判断からも性質は若干異なるといえます。
まとめ
”和牛のオリンピック”全国和牛能力共進会について説明しました。
種牛の部と肉牛の部というのに分かれており、牛そのものを評価する部と牛肉としての質を評価する部があることがわかりました。
全国から約500種もの牛が集結するともいわれており、全共において賞に輝くことはまさに名誉といっても過言ではありません。
また5年に1度の”祭典”よろしく、開催による経済効果と地域活性化にも注目が集まります。
経済効果を算出したところ、宿泊費や飲食費・会場建設費などの直接効果が28億2000万円、関連産業への間接効果が15億3000万円‥と、経済効果は全体で43億6000万円に上るとの試算があるとか。
国産和牛の注目度や評価をさらに高め、さらには持続的な消費拡大につながります。
みなさんもこれを機に、日本一の和牛をいただいてみてください◎
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。