みなさんこんにちは、田舎の精肉店肉処とよた略して『肉とよ』です🍖
以前、牛丼チェーン店について肉とよ的に解説させていただきました。
日本人は従来魚を好んで食べていましたが、食の欧米化が進んでいることから、食肉をより多く消費するようになっています。
牛丼に限らず今や外食産業に欠かせない食肉ですが、食肉の消費量が順調に増加して行く中、日本の食肉産業に大きな影響を与える出来事がこの30年間に2つありました。
1つは1991年の牛肉の輸入自由化。
もう1つは2001年に日本、2003年に米国でそれぞれ発生したBSE(牛海綿状脳症うしかいめんじょうのうしょう)です。
BSEの発生から12年経ち、2013年5月に日本は「無視できるBSEのリスクの国」に認定されました。
ようやく牛肉の消費量は回復傾向にありますが、BSE発生前のレベルにまでは達していません。。
さて。
今回は牛肉を語るうえで忘れてはいけない、この『BSEについて』肉とよ的に解説していこうと思います。
BSEとは
【BSE=牛海綿状脳症(うし(ぎゅう)かいめんじょうのうしょう)】
英語:Bovine Spongiform Encephalopathy)の略称で、牛の脳の中に空洞ができ、スポンジ(海綿)状になる感染症(プリオン病)を指します。
この病気を発症した牛は、当初は群れから離れたり痙攣を起こしたりする程度で目立った症状は現れませんが、やがて音や接触に対して過敏な反応をするようになり、病状がさらに進むと運動機能に関連する部位も冒されて立てなくなるなどの症状が出てきます。
一般的には狂牛病(きょうぎゅうびょうMad Cow Disease)として知られ、1986年にイギリスで初めて発見されました。
BSEに感染した牛については回復させる治療法は存在しません。
日本国内でBSE検査により陽性が確認された場合、家畜伝染病予防法に基づいた殺処分命令が出され、当該患畜は速やかに殺処分、その後焼却処分が行われる事が多いです。
また、飼料を介した感染が疑われる疾病であるため、場所・時間に限らず当該患畜と同一の飼料にて育成された可能性があるものについても、全てにおいて陽性か否かの調査が実施されます。
なお、日本でのBSE感染牛の発生は以下の通り。
2001年 | 千葉県(9月)・北海道(11月) |
2004年 | 神奈川県(2月)・熊本県(9月) |
これを受けて日本国政府は、2001年10月からBSE対策事業の一環として、全頭検査前の国産牛肉買い取り事業を農林水産省が実施しました。
‥が、これを悪用した食肉関連企業による牛肉産地偽装事件が相次いで発覚し、大きな社会問題となりました。
世間一般に、一連の流れをまとめて『BSE問題』と表記されます。
2009年1月に北海道でBSE患畜(2000年生)が発見されたのを最後に、BSE患畜の発生は見られなくなりました。
ヒトへの感染を予防するために
当初ヒトには経口感染しないとされていました。
しかし、狂牛病に感染した獣肉で作られたキャットフードを食べたネコが死に、解剖したところ海綿状脳症であったことから、食物から感染した疑いが非常に高くなり、牛同士以外でも牛肉を通じての感染が疑われました。
狂牛病と変異型を含むクロイツフェルト・ヤコブ病は、非常によく似ていることから、同一病原体によるものと現在のところ結論されています。
【クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob disease,CJD)】
異常プリオン蛋白質が脳内に侵入し、脳組織に海綿状の空腔をつくって脳機能障害を引き起こすもの。
進行が早く、ほとんどが1~2年で死に至ります。
一般的には初老期に発病し、発病初期から歩行障害や軽い認知症、視力障害などが現れます。
※なお、ヤコブ病は患者に接触しただけで感染することはありません。
日本においては
- 脊髄
- 背根神経節を含む脊柱
- 舌と頬肉を除く頭部(具体的には眼・脳・扁桃など)
- 回腸遠位部(小腸のうち盲腸との接続部から2メートルの所まで)
が特定危険部位に指定されています。
これらの部位を摂取するとCJDを発症する危険が高くなる、といわれています。
牛の検査や特定の国からの輸入停止、飼料や加工過程についての規制と、感染した牛からの肉や牛乳など直接・間接(原料として生産された加工品)が人間にわたらないように、世界各国で配慮がなされています。
が、畜産業界などの政治的圧力の高い国では、必ずしも解明に積極的ではありません。
また、当事国では解決されたとみなされても、国際的には汚染地域として輸出の制限を続けられる場合もあります。
食用牛輸入先の国別比率
現在の食肉用牛の輸入先の国別比率にもその傾向が見られます。
牛肉の輸入自由化により、日本の牛肉需要を支えてきたのは主にアメリカ・オーストラリアでした。
当初の輸入量は半々でしたが、2003年、アメリカ産牛肉にBSE問題が発生し全面差し止めに。
2005年に輸入再開にいたりましたが、全頭検査が拒絶されたり、抜き打ち検査にて輸入禁止の脊椎部が混入していたりと、アメリカ産牛肉の信頼回復は遅れています。
一方、オーストラリア産のオージービーフは独自の検疫体制を確立。
BSEや口蹄疫の発生がないこと、さらには日本向けにお肉がより美味しくなるように穀物飼育をはじめたことから、ファストフードや牛肉チェーン店を中心に安定量が輸入されています。それをふまえ牛肉の原産国別の仕入れ比率をみると、原産国別では「オーストラリア産」が45.2%と最も高く仕入れの半数近くを占めています。
※(独)農畜産業振興機構「外食産業における食肉の消費動向」より引用
次いで「国産」が43.4%、アメリカ産牛肉の輸入のシェアは伸びず、2.5%にとどまっています。
BSE問題後は、ニュージーランド産やメキシコ産の輸入も増加しています。
まとめ
今回はBSEについて肉とよ的にまとめてみました。
感染病は怖いですが、正しく処理されることによって危険性はグッと減ります。
‥が、どこにでも抜け道はあるといいますか。。
別記事にてご紹介するBSE問題は最たるものですね。
畜産業者や国が安心・安全に食肉を届ける制度をつくるのはもちろんです。
さらには私たちも実際に口にするものについて、少しでも知識を深めることは決して無駄ではないと思います。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。